クールスポットマップ制作の背景

オリンピック観客の熱中症予防が契機となる

東京クールスポットマップは、もともと2020年夏の東京オリンピックの開催時、猛暑時に都心に滞在するであろう、膨大な数の観客の熱中症予防を目的として企画したものです。
2018年4月に、東京オリンピック大会組織委員会の暑さ対策のご担当がクールシェア事務局を訪問され、「オリンピックの観客の熱中症予防にクールシェアが使えないか」、という相談を受けました。
この話が無ければクールスポットマップは作らなかったと思います。

そもそも、クールシェアは地域にお住まいの方のために始めたもので、猛暑時に競技会場から外に出る何万人という観客には対応できないので、いったんはお断りしました。「まちでクールシェア」で提供できる座席数には限界があるからです。
そこで、4つのクールシェアのパターンから「自然でクールシェア」の活用を提案しました。都心にある大規模の公園や庭園、公開空地などを、観客の一時滞在場所として活用するというアイデアです。

例えば、新国立競技場のすぐ近くには新宿御苑があり、観客の一時滞留場所として格好のクールスポットになりますが、大会組織委員会や東京都はその活用は考えていません。大会組織委員会は会場内の暑さ対策、東京都は「ラストマイル」という、最寄り駅から会場までのルートの暑さ対策を中心に対応しているからです。
競技が終わったら、観客はすぐ電車に乗ってどこかに移動するという想定です。しかし、会場の近くでゆっくりしたいという人も多く、移動した先では大勢の客が集中し、猛暑時に行き場を失うことが考えられます。そこで、熱中症予防のために近くのクールスポットの情報を提供することが有効だと考えました。

時間的猶予がないので、大会組織委員会や行政の協力が得られないまま、クールシェア事務局の自主プロジェクトとして、協力者に呼びかけて調査を始めました。
まず、公園などが猛暑時に安全なのか確かめるために気温を測りました。しかし気温には顕著な差が出ないので、暑さ指数(WBGT値)を測ったところ、都心の公園や庭園などの木陰や日陰は十分に涼しく、熱中症予防に有効なクールスポットであることを確かめることができました。

三密を避けた「自然でクールシェア」のすすめ

新型コロナウイルスの流行と東京オリンピックの開催延期に伴い、クールスポットマップの制作をいったん中断しました。
その後、環境省と協議のうえ、新型コロナウイルスの感染防止のために、屋内でのクールシェアの展開は自粛することになりました。

そこで、遠くに避暑に出かける代わりに、近くのクールスポットでリラックスするという時間の過ごし方を提案することにしました。
新たなクールスポットの暑さ指数の測定を再開し、2020年8月20日に、東京クールスポットマップベータ版を暫定公開しました。予算が無いので当初予定よりも簡便な仕様となっています。

東京オリンピックの暑さ対策から始まったために、都心を中心にクールスポットの登録をしていますが、今後はより範囲を拡げて登録していきたいと考えています。現時点での登録数は約110の場所、約280のクールスポットです。大きな公園などでは、ひとつの場所でいくつものクールスポットが登録されています。

正式公開に向け、どうかよろしくご協力、ご支援のほど、お願い申し上げます。

2020年 9月10日 クールシェア事務局代表 
        多摩美術大学環境デザイン学科 教授 堀内正弘


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